N氏「意識は実在しますか?」
T氏「答えはノーです。」
N氏「どういうことですか?」
T氏「脳です。そう言う私の意識も脳です。」
N氏「ほほう、まあ、君は脳なのかもしれないが、少なくとも私の意識は脳ではないね。」
T氏「君も脳だよ。君の脳が君に「脳ではない」という幻想を刷り込ませているのだよ」
N氏「では、自由意志はどうなるのか?」
T氏「私には自由意志などない。私は脳なのだから。」
N氏「君は脳なのだね。では、このナイフを君の脳に突き刺そう。」
T氏「私を殺さないでくれ。」
N氏「君の脳がそう言っているだけだろう。」
N氏「それに君の理論によれば、私も脳なのだから、私が君を殺すということはありえない。単に、私の脳が君の脳を破壊するということ。君の脳は単により細かくなった無機的物質に還るだけなのだから、死は存在しない。つまり、脳に他ならない君を破壊したとしても、殺人など存在しえないのだよ。ゆえに私には罪もないし、そんな私を罰することはできない。君は脳なのだから。」
T氏「わかったから、わかったから、私は脳ではない。頼むから殺さないでくれ」
N氏「いいだろう」
別れ際にT氏はボソッと呟いた。
「それでも、私は脳なんだ。」
T氏は人工知能を作り上げることに成功し、さらには、法学においても、数学においても、歴史学においても、すべてを粒子に還元し物理学的に解明した。
そこで、N氏はT氏を無機的な存在に還元した。
そこでT氏の娘U子は、N氏と会い告発した。
N氏は言った。
「私は脳ではないが、彼はただの脳なので、彼の肉体を破壊しても罪はない。」
U子は言った。
「いいえ、T氏は脳だったので、T氏の脳を破壊することはT氏を破壊することになるけど、あなたは脳ではないので、あなたの脳を破壊してもあなたを破壊したことにはならないわ」
U子はN氏の脳を無機的な存在に還元した。
N氏は幽霊となってU子を祟り、こう言った。
「それでも、私は脳ではない。私の幽霊がそう囁くのだ。」と
U子は自分の脳を治療してもらい、N氏の幽霊の幻覚を消そうと試みた。
U子は言った。
「私の脳がN氏の幽霊を見させるの」
しかし、いくら治療しても幻覚は治らなかった。
しかし、最新の脳科学により、T氏の脳と肉体は再現された。
しかし、T氏の脳はN氏の霊が乗り移り、T氏の頭から脳ごと出てきてこう言った。
「俺はお前だ。お前は俺の言うとおりにしろ。いいか。U子を殺せ」
T氏はノーと言いたかった。殺したくなかった。しかし、T氏は脳なので、イエスと答えるしかなかった。
T氏はU子を無機的な存在に還元した。
N氏はT氏の脳として言った。
「脳は脳だ。私は私だ。ゆえに、私は脳ではない。」
闘争の末、T氏は脳からN氏を追い出したが、N氏は心臓に移動した。
心臓に移動したN氏は言った。
「脳よりもハートのほうが大事だ」
N氏のハートはぶち抜かれ、T氏は血と涙を流した。
めでたしめでたし
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