2021年10月17日日曜日

どんなときにも問う。それであなたは幸せか

 「何かがおかしいと疑問に思う。問いが溢れてがんじがらめになる。それであなたは幸せか。そうでなければ今すぐ問うことをやめろ」

そう言う人がいた。


みな、それぞれ問いや悩みに苦しんでいる。

「どうして私は評価されないのか」

「どうしてあの人があの待遇なのか」

「どうして人とうまくやっていけないのか」

「どうしてあのような不幸が起きたのか」

「どうして世の中が理不尽なのか」

あなたは悩みすぎて、もう悩みたくないと思うかもしれない。

思考停止を願い、何も考えず酔生夢死したいなど思う人がいてもおかしくはない。


だが、それは違う!と私は思う。




哲学者ミルはこう言った。

「私は、満足した豚であるより、不満足な人間であるほうがよく、 満足した馬鹿であるより不満足なソクラテスであるほうがよい。


それはこういうことだ。


あなたが引っかかってしまったその問いに、悩み、考え、全身全霊で向かい合う。

そのほうがどれほど人生を豊かにすることか。


確かに、あなたはその問いに直面するより、気になってしまう問題を問わずに、無視してしまえば楽であり、忘れてしまえば幸福である。


しかし、本当にそれでいいのだろうか?


例えば、地球温暖化なんてそんなこと、考えずに生きたほうが楽に決まっている。

例えば、政治だって、そんな難しいこと考えずに生きたほうが楽に決まっている。

例えば、会社にこき使われていても、それをどうにかするよりも、何も考えずに受け入れてしまったほうが楽に決まっている。


だが、本当にそれでいいのだろうか?

「悩みが深いほど、世界は美しくみえるかもしれない」


問題を問うとは、単に頭でその問題を転がして遊ぶというだけではない。


その問いを生きる、ということなのだ。


私たちはそうした問いを投げかけてくるこの世界にすでに投げ入れられてしまっていたんだ。


最初は、地球温暖化について本読んで頭で転がすだけでいい。だが、本当にその問題を生きるには実際にその問題の解決に当たらなくてはならない。


そのとき、その問題を身体で生きることになる。


確かに、それは大変だ。


例えば

「誰にも評価されない」

そんなことを悩んでいるとする。

頭でその問題を巡らす。焦る。どうしたらいいのかと考える。


そのとき、実際にその問題を解決するために自分の身体を動かして対処する、ということを、少なくとも意識しているか?意識するだけでいい。


実際に、その解決のために現実を動かすことが難しくても、動かそうという意識を持っていたか?


だが、そのとき、問いは単なる頭の中だけのものではなくて、問いを生きていることになる。


そうして、実は、その問いを通して、自分自身と向き合っているとも言える。


「何をそう難しく考えているの?」

「考えないほうが楽に生きれるよ」

「若いねぇ」

「世の中、甘くないよ」

などと言って世間はあなたの問いを思考を潰して何も考えない人間にしようとしてくることがある。

あなたはあなただけが気にしているかもしれないその問いを言われるままに潰してしまうかもしれない。そのほうが楽だから。


しかし、むしろ、あなたはその問いを守るべきなのである。


それはあなたの感受性に引っかかる問い、他ならぬあなただけの問いなのだから。


あなたが感じた世の中の理不尽をあなたなりに生きたほうが、それは苦しいことだろうし、現実には解決できないかもしれないが、それでも無視しないほうが良いと言える。


問いを生きるということは、幸せじゃないかもしれない。

その問いを持ってしまった自分自身をごまかさずに、生きる。

それは苦しいことかもしれない。

その問いを通して、あなたにとっての世の中の理不尽さに直面することかもしれない。

それで幸せかどうか?

幸せじゃなくてもいいじゃないか?

問いに向き合わずに誤魔化した脆い幸せを生きて、何も知らずに死んでいく。


そう、あなたはいずれ死んでしまう。100年先か、50年か、明日か。

何年生きようとも死んでしまう。

それは事実だ。


ただその事実を見据えるだけでも、すでに幸福とは言えないんじゃないか?


ということは幸福とはすべてまやかしなのではないか?


むしろ、あなた自身の問いを大切にし、育て、考え続けること。

あなたがあなたとして生まれてきたなら、それをすべきなんじゃないか??


なぜなら、あなた自身の固有の問いを生きることで、あなたはあなた自身に忠実でいられるから。


この世界にあなたはあなた自身として生まれたのだから。


どんなときにも問う「それであなたは本当に求めていることなのか?」と。そうでなければ、それはやめろ。



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追記:中島義道の哲学は私の中に深く刺さっており、その影響下にあるため、読んだことのある方は、この記事を彼と同じことを言っているように感じられると思います。