なんと、私が今年の9月に出演するあいちトリエンナーレ舞台芸術公募プログラムのひとつ。
これがその脚本なのだ。
『しっぽをつかまれた欲望』
ピカソが戯曲『しっぽをつかまれた欲望』を執筆したのは、《ゲルニカ》を描き終えた4年後の1941年、そう、ナチス・ドイツ占領下のパリである。
ピカソの紡ぐ言葉はまるで彼の絵画のように抽象的かつ詩的なイメージに溢れ、「大足」「玉葱」「沈黙」「太った不安」そして「丸い先端」といったコミカルで隠喩的な登場人物たちが、シュールレアリスティックな会話と行為を繰り広げる。
例えば、第二幕第二場では10の登場人物すべてが入った巨大なバスタブを二人の覆面の者が運んでくるところから始まり、彼らの台詞のやりとりののちに、二匹のわんわんが吠え立てながらみんなを舐め、みんなが飛び出す。そのとき、タルトのみ全裸に靴下なのだが、他の入浴者たちはみな普通の服で浴槽から出てくる。そうして彼らは食料の詰まった籠や、ワイン、食器などを持ち出して、ピクニックを始める。ところが、棺をかついだ争議人夫たちがやってきて、それにみんなを押し込み、釘を打ち付けて運び去る。というのである。
正直、初めて読んだときは、これを舞台にするのはかなり大変だと思ったw
初演は未だナチス占領下の1944年の春、フランスの詩人・民俗学者ミシェル・レリスのアパルトマンの一室にて、リーディング形式で密やかに行われた。
ミシェル・レリスという文化人について調べて見たところ、驚くことがわかった。彼はシュルレアリスム活動にも参加し、バタイユと「ドキュマン」誌、サルトルと「レ・タン・モデルネ」誌の立ち上げにも参加していた、のみならず、画家フランシス・ベーコンによって描かれた肖像画が残っている。ベーコンの愛人だったのだろうか?
しかし、それだけではなかった。こちらをご覧あれ
ピカソによっても描かれていたのである。
さらに、、
ジャコメッティによるレリスの肖像画である!!
レリスはこの3人の芸術家を愛好していたらしい。こんな本を書いている。
話を戻そう。
さて、このレリス氏のアパルトマンに戻ろう。そこにはレジスタンスに身を投じる文化人たちが他にも多く一堂に会し、役者として哲学者サルトル(丸い先端役)やフェミニズムの大家ボーヴォワール(従姉妹役)、ピカソの愛人ドラ・マールが登場、演出を「異邦人」で有名な作家アルベール・カミュが務めたというから驚きだ。さらに観客にはバタイユも来ていたらしい。
ちゃんと調べてみました。
演出: アルベール・カミュ
役者
大足: ミシェル・レリス
玉葱: レーモン・クノー
タルト: ザニー・オービエ
従姉妹: シモーヌ・ド・ボーヴォワール
まるい先端: ジャン・ポール・サルトル
2匹のわんわん: ルイーズ・レリス
沈黙: ジャック=ローラン・ボスト
ふとった不安: ジュルメーヌ・ユニエ
やせた不安: ドラ・マール
カーテン: ジャン・オービエ
その他参加者: ヴァランチーヌ・ユーゴー、ピエール・ルヴェルディー、ジョルジュ・ユニエ
観客: ジョルジュ・バタイユ、ジャン=ルイ・バロー
この写真はほぼ同じ頃、ピカソのアトリエにて撮られた写真である。
後方左からジャック・ラカン、セシル・エリュアール、そしてピエール・ルヴェルディ(協力)、ルイーズ・レリス(二匹のわんわん)にパブロ・ピカソ(戯曲)、ザニー・カンパン、ヴァレンタイン・ヒューゴ、シモーヌ・ド・ボーヴォーボワール、ブラッシャイ
前方左から 、サルトル(まるい先端)、アルベール・カミュ(演出)、ミシェル・レリス(大足)、ジャン・オービエ(カーテン)
半数以上がかの戯曲に関わっているのである。
わたしもぜひこんな文化人たちとともに強烈な刺激の日々を過ごしてみたいものだ。
予断だが写真にも写っているフロイトを構造主義的に捉えなおした精神分析医のジャック・ラカンだが、ピカソのプライベートな精神医もしていたそうだ。
二匹のわんわん役、安部火韻 |
いいか、これは「犬」ではない、「わんわん」なのである。
しかも、せりふは「ウワン、ウワン」これのみ。
かなり楽しみである!
基本的には当日券は無いと思ってもらってよく、ご予約&詳細はこちらから。
http://watabe-gouki.net/20190925shippowotsukamaretayokubou/
⏰日時| 2019年9月25日(水)19:00- 受付・ロビー開場は1時間前より。劇場内開場は15分前より。
🎪会場|愛知県芸術劇場・小ホール
💰料金|前売3,500円 当日4,000円 ドネーションチケット3,500円(9/8まで)
もしや当日、予定があって来れないという方は、試演会やナイトピクニックなる交流会も行っています。
最後の最後に、私の持っている「しっぽをつかまれた欲望」の翻訳本だが、なんと訳者でありピカソ研究者である大島辰雄から、かの芸術家岡本太郎へと献本されたものだった。
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