シミュラークルと本質?
贋金造り
金や銀などの貴金属によって硬貨が作られていた時代、贋金作りたちは、様々な手法を用いて、金に似せたものを作ろうとした。
しかし、贋金は似せれば似せるほど本物たりえない。それは贋金を構成している物質が違うからである。
彼らは金や銀に混ぜ物をしたり、別の安価な金属を使って純金や純銀にできる限り似たものを作り出そうとしてきた。
なぜなら、純金や純銀によっては贋金を作ることはできない。純金や純銀そのものがあるなら、贋金を作る必要がないからである。
だから、その末裔は本物の金や銀を作ろうと試みた錬金術師たちである。錬金術師たちはあくまでも「本物の」金や銀に拘っていた。その試みは失敗に終わったのだが。
一方、高利貸しなど金貸業者は、本物のお金を作り出すことに成功した。それも金や銀に全く似せることなく。彼らは人々から金や銀を預かったとき、預かったことを証明する証文を渡した。紙切れ一枚である。
しかし、人々は、この証文を金の代わりに何かを買うときの支払いに使った。なぜなら、その証文をホンモノの金や銀と交換することができるのだから。これがお札の起源である。