映画の父とされるリュミエール兄弟が1895年に映写機シネマトグラフを開発したことは知られています。しかし、その4年前、すでにエディソンはシネマトグラフの原型となるキネトスコープを開発していました。そのキネトスコープによって造られた映画の一つが「フランケンシュタイン」であり、フランケンシュタインの初めての映画化と言われています。
これからネタをばらしていきますので、よかったら、今見てみましょう。10分程度の短編です。
では、このエディソンスタジオの「フランケンシュタイン」では、どんな造形の怪物だったのでしょうか?
巨大な竃の扉の小窓から覗いて、怪物のでき加減を見るビクター
次第にむくむくと出来ていく怪物、まるで電子レンジでチンすると膨れてできるカップケーキのように。
この怪物創造の方法は、明らかにホムンクルス伝説が関わっています。ホムンクルスとはラテン語で「小さい人間」を意味し、ヨーロッパの錬金術師たちが作ろうとした小型の人造人間で、文学作品ではゲーテの「ファウスト」(第二部)に出てくることで有名です。
この怪物創造の方法は、明らかにホムンクルス伝説が関わっています。ホムンクルスとはラテン語で「小さい人間」を意味し、ヨーロッパの錬金術師たちが作ろうとした小型の人造人間で、文学作品ではゲーテの「ファウスト」(第二部)に出てくることで有名です。
少し引用してみましょう。
要するに、数百の物質をある方法で調合しガラス瓶に入れて蒸留するとあります。映画では入れ物が大鍋になっていますが、作り方が似ていますね。そして、このホムンクルスの創造も、ゲーテの「ファウスト」も、原像を辿れば、ある錬金術師に繋がります。
それはパラケルススです。
"Portrait of Paracelsus" by Aegidius Sadeler |
パラケルススは16世紀初頭のスイス出身の医師であり、錬金術師です。本名はテオフラストゥス・フォン・ホーエンハイム(Theophrastus von Hohenheim)と言います。
ホムンクルスについては、彼の著作、“De Natura Rerum”「ものの本性について」(1537年。タイトルはラテン語ですが、中身はドイツ語でした。ただ、偽作だという説が有力)に書かれており、彼は実際にホムンクルスを作ったとも言われています。
彼の著作ではゲーテの「ファウスト」よりさらに具体的に書かれています。
図のように先の細い管が上から下に伸びたガラス瓶(フラスコ)の中に精子を馬糞とともに入れ
(数種類のハーブも共に入れる場合もある)
40日置くと腐敗が進み、靄のようなものができ、
次第に、透明で実体が曖昧ではあるが人の形をした蠢くものが生成されます。
(数種類のハーブも共に入れる場合もある)
40日置くと腐敗が進み、靄のようなものができ、
次第に、透明で実体が曖昧ではあるが人の形をした蠢くものが生成されます。
さらにこれを40週間、人間の生き血を与えながら、馬の胎内と同じ温度で養うとホムンクルスの完成です。
ホムンクルスは、小さいが、生まれたときから知識もありコミュニケーションもできると言われています。
いかがでしょうか?
映画では、具体的な材料やかかる時間が明示されていませんでした。また、ホムンクルスに比べ、怪物は大きいため、作る器具も大きくなければなりませんでした。ですが、なにか物質を調合して作る過程は似ているものがあります。
さらに詳しくは、William R. Newman,による"Promethean Ambitions"(プロメテウスの野望)という本を参照。→http://d.hatena.ne.jp/nikubeta/20120903/p1
パラケルススの時代の学術的背景から、ホムンクルス造形が当時において合理的であったことを示す論考もあります→http://information-station.xyz/8456.html
原作との関係において考えるなら…
実は、フランケンシュタイン原作においては、ビクターがパラケルススの本を読んでいたことが書かれています。ビクターが大学に入学する以前の話です。10代でこんなもの読んでいたんですね。
映画ではきっとこのことからホムンクルス伝説を起用したのでしょう。
映画「フランケンシュタイン」(1931)とゴーレム伝説↓
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