2016年5月5日木曜日

「エイリアン」の考察

確かに他のを見てしまうと1作目は見劣りします。しかし、あの1作目はホラー映画として作られたからなのです。襲ってくるのがなんなのかわからないから怖い。だから、1作目はパッケージもエイリアンの写真を載せない。

ホラー映画の宿命として、2作目以降はサスペンスかミステリーになるか、怪物を敵にしてアクションにするのがいい方法なのです。
そのままホラー映画でがんばろうとすると「着信アリ」の続編のように失敗します。

2作目エイリアンズは舞台や装備は明らかにベトナム戦争を意識して作られてました。そして、ラスボスとしてのクィーンとの闘いや護るべき少女を出したのが効いてました。クィーンはなんとジェームズキャメロン自身でデザインしたそうです。
タイトルはエイリアン2ではなく、「エイリアンズ」1作目では1匹だったのが、2作目ではたくさん出てくるので複数形となったのです。このエイリアン、エイリアンズという表記は「イットケイムフロムアウタースペース」と「放射能X」という古いSF映画を意識してつけられたらしいです。

エイリアン3は舞台は監獄で、犬の遺伝子をとりこんだエイリアンがすばしこくなっています。そして、少しだけ監獄にいる悪人とエイリアンのどちらが悪かみたいなテーマが入ってきています。ただ、評判はよくありませんでした。僕は好きですが。

エイリアン4はジャンピエールジャネというフランスの監督が撮っており、さらに善と悪の相対化「エイリアンは悪なのか?」というテーマがメインになっており、エンタメ要素がなくなってきてます。それでひょっとするとあんまり楽しめないかもしれません。ちょっと小難しいので。

それを考えるとAVPシリーズは、そういう哲学的な要素はすべて排除され、ほんとにエンタメだけ特化されました。エイリアンシリーズとは世界が違うように設定されています。

リドリースコットの「プロメテウス」という映画は、エイリアン1作目の世界の続編と言われていますが、見るとハテナ続きになります。謎が多すぎる映画でした。次回作に期待。

HRギーガーはすばらしい。
スペインの偉大なシュール映画の監督ホドロフスキーが惑星デューンの映画化のため、画家であるHRギーガーをハリウッドに呼んでいなければ(惑星デューンは映画化失敗したが)、この映画エイリアンは決して作られませんでした。当時、HRギーガーは映画には無関心でしたので。(なんとこの惑星デューンの映画化のさいにしたHRギーガーの宇宙の城のデザインはなんとそのままプロメテウスに使われています!)

さて、HRギーガーがしたエイリアンのデザインですが、元になるモチーフは何でしょう?

エイリアン1作目の革新について
深層1: ゴシックホラーを宇宙に再現した。
エイリアンは明らかにゴシックホラーを基盤としています。宇宙貨物船はドイツのお城をモチーフとし、最後の脱出ポッドは棺桶をモチーフにしています。そして、恐怖に慄かせるのは女性。エイリアンは1作目においては最初は何者なのか全く明かされない。

深層2: 性的なテーマを入れ込んでいる。
実はこのエイリアンのモチーフは男性器である。よだれをだらだら流して黒光りしていて、あの頭は亀頭なのである。そして、アンドロイドはエイリアンを宇宙船に乗せて連れ帰ろうと画策していた。アンドロイドの体液は白い、首がとんだとき射精を連想させるように。
エイリアンとアンドロイドは感情を持たず攻撃的な男性の象徴なのである。
そうして女に喰ってかかり、闘うが、最後には女性側が勝利するという筋書きなのである。
また、エイリアンは腹を食い破って生まれるが、これは妊娠した女性がお腹にいるのは蛇の子で食い破って出てくるのではないかというドイツの古い恐怖譚に基づいている。
そして、エイリアンのパッケージおよびPVの卵ですが、原初的なものを見せることによってある種サブリミナル効果をもたらすと言われています。

深層3: 神秘的で哲学的なテーマが入っている。
プロメテウスは明らかに、創造主に会いに行くというテーマ(これはブレードランナーのときからのリドリースコットの永遠テーマである。)だが、エイリアン1作目にも判りづらいのだが最初から宗教的なテーマが入り込んでいる。
それは完全生物という言葉である。アンドロイドは、エイリアンを純粋に欲求のみに従い生殖し続ける完全生物と表現した。人間は感情と理性の両方を持っているために不完全な生物であると。ちなみにアンドロイドは人間を模して作られているためにより不完全と言えるかもしれない。
プロメテウスはこの観点から何かしら解明できるかもしれない。

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