2025年11月15日土曜日

プラトンの髭をどうしても剃りたい哲学者クワイン



 クワインの論文「なにがあるのかについて」を対話ふうにして書いてみた。



クワインはプラトンの髭を剃りたいらしい。

プラトンの髭といっても、実在の哲学者プラトンの髭があったということじゃなくて、プラトン的な考え方の先に生まれた哲学的な髭のことだ。

プラトンはこの世界にはいろんな馬があるが、馬そのものがないと言った。そこで、馬そのものという余計な存在者(存在するもの)を作った。

その延長線にいる(とクワインに見なされる)哲学者たち(実際にはマイノングという哲学者とかがいますが)によって、存在するものはもっと増えていった。

例えば、ペガサスの存在とかね。

彼らプラトン的な人は「ペガサスは存在する」と主張する。それをプラトンの髭みたいなものだとクワインは言ったのだ。

なんでもかんでもすべて存在させたがるプラトン的な哲学者の論理をちょっと提示してみよう。


◆ペガサスは存在する。

仮に「ペガサスは存在しない」と仮定する。

ペガサスが存在しないならば、「ペガサスが存在しない」とは言えない。

なぜなら、ペガサスが何も意味していないので、「ペガサスが存在しない」という事態がどういうことなのか、意味が不明だからだ。

ゆえに、ペガサスは(必ずしも物体として存在しているわけではなく、虚構存在者、あるいは観念的存在者、あるいは心的存在者、あるいは可能的存在者かもしれないが)存在する。


⚪︎そこで、クワインは反論する。

プラトン派の意見だと「バークレーカレッジの四角い丸屋根」も同じ論理で存在することになりますよ。それは存在しないと言えさえすれば存在しなきゃならないのだから。


◆そこで、プラトン派も受けてたつ。

はい?「バークレーカレッジの四角い丸屋根」はそもそもその有無以前に無意味なのでww


⚪︎クワイン(withチャーチ)

いやいや、何が有意味で何が無意味かが原理的に構成できないのでそんなこと言われてもね。

〔with〇〇は、クワインのオリジナルではなくて、〇〇という哲学者の議論を使うという意味〕


⚪︎クワイン(withラッセル)

そもそも、名前に見えるものも分解して記述句にしてしまえば、その存在について言及することなしに語れるんじゃないですか??

「Xはバークレーカレッジのものであって、四角であって、丸であって、屋根である、そのようなものがまた存在者でもあるか?」みたいな感じに。


◆プラトン派

じゃあ、ペガサスはどうすんだよ?

ペガサスは固有名だから分解できないよ。アリストテレスも言ったように、固有名の指す個物は主語であって、決して述語にはならないんだ。


ペガサスPegasus というのは天馬であって羽があってメドゥーサの首から生まれて英雄ベレロポーンに飼いならされ、ゼウスのために雷鳴と雷光を運ぶ存在者だが、

「もし、ペガサスが英雄ベレロポーンに飼いならされなかったら?」

「もしペガサスが羽を持たなかったら?」

「もしペガサスが馬ではなくて宇宙ロバだったら?」

みたいな仮定の話が有意味なのは、ペガサスという固有名がそれらの述語になりうるもののどれでもないからなんだよ。


⚪︎クワイン

そんなら「ペガサする」Pegasizesという述語にしてしまえば良い!


◆プラトン派

「ペガサする」!?!?んなアホか!


⚪︎クワイン(withフレーゲ)

きみ、そもそも名詞って、ひとつの対象を示しているとは限らないんだよ。宵の明星と明けの明星は同じ金星を指すだろ。でも、ふたつの言葉の意味は確かに違うんだ。つまり、名前が指しているものが存在していると考えるより、述語的な意味があると考えるほうが妥当なのさ。


◆プラトン派

ぐ…。まあでも100歩譲ってそれがアリだったとしても、まだ問題はあるんだよ。


あらゆる述語に使われているものもまた有意味でなければならないし、有意味であるためには存在していると考えるしかないんだよ。

「Xはバークレーカレッジのものであって、四角であって、丸であって、屋根である、そのようなものがまた存在者でもあるか?」みたいな感じに考えても、バークレーカレッジそのものも、四角そのものも、丸そのものも、屋根そのものも無ければ結局は語れないんだから。


⚪︎クワイン

いやいや、「白い犬はいるか?」と言っているときには、その言葉は白い犬の存在には関与しているが、白そのものの存在にも、犬そのものの存在にも関与してないんだわ。そんなものの存在設定しなくてもいいんだわ。

小難しい言葉でいうと「理論がコミットしている存在者とは、その理論のなかで肯定される言明が真であるには、その理論の束縛変項によって指示されることができなくてはならない存在者のことである。」(20頁)

まあでも、まだまだいろいろと問題はあって、現実にどんな存在論を採用すべきかという問いには答えられないよ。

とにかく数学では論理主義と直観主義と形式主義があったり、原理的な概念図式として現象主義的なものと物理主義的なものがあったりはするね。


◆プラトン派
なるほど、まだあなたはソクラテス止まりなんだな。
いろいろ揚げ足を取ろうとする割に、あなた自身は知らないということを自覚している程度なんだから。


⚪︎クワイン
これから、寛容と実験的精神を持って取り組むさ。

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