2025年6月8日日曜日

日常に侵入するグロい芸術作品









 グロテスクなものが芸術作品とされることは、今までにもあった。というか、そういうものはむしろ多くありふれている。しかし、今回これが炎上しているらしいのはそれが刺身などに使われる醤油皿だったからではないだろうか。それまでは、グロテスクなものが芸術品になったとしても、それは美術館における展示という、いわばお客さんにとっての非日常的な空間、自分たちから離れた安全な場所にあるので、「こういう芸術ね。」ということで納得してきたのだろう。あるいは、グロテスクなものも、またお祭りや宗教的な儀式といった非日常的な空間においてのみ許されてきた部分があるだろう。しかし、これが醤油皿になったことによって、自分たちのとても近い場所、日常的なものへとグロテスクなものが侵犯する。ゴヤのグロテスクで残酷な絵を購入したとしても、食卓に飾ろうと言う人はあまりいないだろう。しかしながら、アートは、そもそも我々の日常へ侵犯することを試みてきた。そういう側面もある。そのため、時に過激であるとして、物議を醸すこともあるし、物議を醸すことを目的としている場合すらもある。今回この醤油皿が新しいのは、それが我々にとって特に近い、リアルな我々の食事を想起するからだろう。

0 件のコメント:

コメントを投稿